地域をつなぐ、地域に貢献する 観測研究
日本列島は1995年阪神淡路大震災(兵庫県南部地震(M7.3))の発生以来、地震活動の活動期に入ったと認識されて、以後、2002年福岡県沖地震(M7.0)、2005年中越地震(M6.8)、2008年岩手宮城内陸地震(M7.2)そして2011年「東日本大震災」が発生しています。平成23年3月11日、東方地方太平洋海底下にマグニチュード9.0の超巨大地震が発生し、地震動により東日本の広範囲で建築物被害、地すべり・斜面崩壊などの地盤被害、軟弱地盤の液状化による建物・ライフライン被害など発生しました。また、太平洋海底が広範囲に隆起して巨大津波が発生し、東北地方太平洋沿岸は浸水により多くの人命と建物などの流出で甚大な被害が発生しました。日本列島以外でも、2004年スマトラ沖地震(M9.0)、2006年中国四川大地震(M7.9)と大地震による甚大な地震被害・津波災害が発生しています。
大地震の前兆現象としては、空が光る、地鳴りがする、鳥や魚がいなくなる、またはたくさん獲れるなど、古くからの言い伝えがあります。井戸の水が溢れ出た、涸れたなどの地変が多く報告されています。その中でも、温泉の地震による変化は湧出量の増減、温度の変化など、地震に伴う現象が多く観測されています。地震を事前に知ることは昔から人々の願いの1つでもありました。地震予知が可能かどうかも定かでなく、それを明らかにするためには地道な観測を継続することが大切です。
鳥取県及び周辺地域は非火山性の温泉が多く、温泉の分布も山陰海岸に沿った地域です。特に、鳥取県は東に1943年鳥取地震(M7.2)と、西に2000年鳥取県西部地震(M7.3)が発生し、温泉と地震活動の関連を調査研究するのに最適な地域と考えられます。この地域の特徴を生かして、温泉水の時間変化を観測し、地震活動との関連を調べる研究を推進することを実施しています。現在、西日本が地震活動期に入っていることから、地震時の温泉水変化を研究することは、地震を予知する研究の1つのステップとなり、温泉水変化の観測事例の蓄積は社会への貢献を果たすことができると考えられます。
2000年鳥取県西部地震の時に、国際ロータリークラブ第2690地区のご厚意により、鳥取大学工学部と京都大学防災研究所に科学技術の進歩・地震被害軽減を目的とする研究の1つである「地震前兆現象の研究:鳥取県・島根県・岡山県の特性を生かした温泉観測研究」を立ち上げることが出来ました。
山陰地域の特性は地震活動域、第四紀火山帯、温泉分布が一致して、ほとんどが海岸に沿っています。また、人口ノイズが少なく観測研究としては適地であります。主に温泉地15箇所にセンサーを設置し、NTT回線を使用して、鳥取大学にデータを収集して、記録・解析を行っています。各温泉では、水温、水位(湧出量)の連続観測を実施し、その他必要と考えられる気象データなどは関係機関から入手、解析しています。地震活動域で広範囲に多くの観測点を設置して観測を実施することにより、今後発生する内陸地震に伴う変化が地震予知研究の進展に寄与することが期待できます。「観測・解析されたデータ」及び研究成果は、地震学会・地震予知連絡会などで報告・研究発表します。
温泉観測ネットワーク
地震予知研究は地下からのシグナルを捉え、それを分析することで地下の状況を知ることです。地震活動と温泉水の時間変化を観測することは、地震予知の基礎データの収集蓄積と分析をすることであり、地震予知へのアプローチです。
山陰・岡山県北部地域で温泉観測のネットワークを作り、地震前後の温泉変化現象を調査します。また、この観測・解析データをインターネットで公表し、地方から全国へ地震予知観測情報を発信します。地震活動域で広範囲に多くの観測点を設置して観測を実施することにより、今後発生する内陸地震の予知への貢献が期待できます。